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Breast Cancer Network Japan あけぼの会 会長
1940年生まれ。77年に乳がん手術を受けたことをきっかけに、翌78年、乳がん患者会「あけぼの会」を設立。全国25カ所の支部と15カ所のネットワークに、3000人の会員と70人の顧問医が参加する同会は、2008年に30周年を迎えた。現在、日本最大級の乳がん患者会の会長として、また夫(ALS闘病中)の介護のため、日英間を行き来し、精力的に活動を続けている。
主な著書は『がんと生きる、けっしてあきらめないで』『がん患者に贈る87の勇気』『乳がん患者に贈る 愛と勇気の玉手箱』など
日本最大級の乳がん患者会「あけぼの会」の会長を務めるワット隆子さん。あけぼの会の最大の目的は「乳がん患者の社会復帰を支援する」ことと「乳がん死を減らす」こと。これまで、自由な発想と行動力であけぼの会を引っ張ってきたワットさんは、同時に、多くの乳がん患者を見つめ、触れ合い、支え続けてきた、いわば生き証人です。今回は、毎年恒例、母の日キャンペーンのスローガンでもある「お母さん、乳がんで死なないで!」をテーマに、ご自身が乳がんにかかった当時から今日までの、乳がん患者の変遷とこれからについて語っていただきました。

あけぼの会をスタートした30年前と比べて、「マンモグラフィで乳がんが見つかった」という人が増えてくればいいんだけど、自分でしこりを見つけて、病院に行ったらそれが乳がんだった、という人が多い、それが私の実感です。
マンモグラフィ検診率が低いのも嘆かわしいけれど、私に言わせると、それ以前に乳がんがどういうものか、自己触診していればしこりだって見つかるものだとか、早く見つければ全部切らなくていい時代だとか、とにかく怖がらないでとか、そういうベーシックな知識をもってもらうことが何よりも大事だと思うの。それで助かっている人がたくさんいるわけだから。
とにかく方法は何でもいいんですよ、早く見つけて早く病院に行ってくれればね。
問題は、しこりを見つけてから病院に行くまでなの。乳がんだと思ったとたんに怖くなって、病院に行かないという人も多いわけですよ。それから「私は乳がんになるはずがないから、違うだろう」と自分勝手に思ってしまう人。「子供も産んでいるし、授乳もしているし、ハイリスク群には入っていないから大丈夫だろう」って。

2008年10月、あけぼの会創立30周年記念の全国大会であいさつをするワット隆子さん。あけぼの会の活動に込める思いは、わずか17人でスタートした当時と変わっていません。
乳がんにかかった人たちを30年間見てきて、時代の変化をすごく感じます。とにかく患者がとても賢くなってきて、「いい医療、治る医療を受けたい」という気持ちが強くなってきました。治癒率の高い治療法の情報を集めて受けたい、とか、治療後に自分が受けた抗がん剤治療がいい方法だったのかを確認したい、とか。それはすごくいいことですよ。そのうえで上手にお医者さんと付き合っていければ賢い患者といえるのです。
先日、あけぼの会のメンバーが2人亡くなってしまったけど、彼女たちだって死にたくはなかったのよ。ただ、最初に情報という“つまずき”があった。現在こんなにもたくさんある情報が、彼女たちが乳がんにかかった当時にもあったら、もっと早く見つけられたと思うのよ。でも、そういう時代じゃなかったの。

同じく昨年10月の全国大会。会場には全国から700人を超す参加者が集まりました。
今は、ありがたいことに専門医のリストもあるし、マンモグラフィの読影能力にもランク(検診マンモグラフィ読影医師・撮影診療放射線技師・医師認定)があって、そういう面から病院を探すこともできます。ただ、その医師が大丈夫と言えば本当に大丈夫なのかは別です。もしかしたら何か問題あるかもしれない。大事なのは自分の目、そして勘。たとえお医者さんが有名な人でなくても、一生懸命診てくれているとか、話をしてくれるとか、自分で納得できるものがあればしばらく様子をみたっていいし、また検査を受けなおすことだってできる。あまりブランドに頼り過ぎても、自分自身が肝心なところを見落とすことだってある。それは患者の知恵として最も大事だと思うの。
私の場合も2つの病院を受診して、どちらのドクターにも「様子をみましょう」って言われていたのに、「100%がんじゃないって言い切れるまで調べてください」と粘り強く押したから、悪性だとわかって命が助かったようなところがあったの。
言われるままに様子をみていたら、手遅れだったかもしれないでしょう。それはすごくラッキーでした。不安を抱えて生きていくよりは、少しくらい胸に傷跡が残っても、私はきちんと診てほしかったわけ。結局は胸をひとつ切ってしまったけれど、大事なのはそこだと思うのよ。あなたはどうしたいのか。何が大事か。そういうところで人生における生き方、考え方が出ると思う。どこで納得するか、納得するまで追求する力とかしつこさが必要だと思うのよ。
元気なのになぜ検診を受けなきゃいけないか。日本人は特に「自分を大事にして」というとピンとこないけど、じゃあ子供は…というと、母親は目の色を変えるでしょう? 自分を大切にすることは後回しにしてしまいがちだけれど、子供を大事に思ったら、「この小さな子を残して死ねない。まず自分を大事にしなければいけない」と思えるのよ。
自分の人生と子供たちの人生、夫のためにも、家族全員のためにも、「今は死にたくないのよ!」という思いが強くあれば、少々痛くても少々遠くても、お金がかかっても、検診を受けるはず。
人間はいつか必ず死ぬし、避けられない死はほかにいくつもあるから、乳がんで死ぬのはもったいない。早期発見・早期治療をすれば治る乳がんという病気で、現代女性が死ぬのは時代遅れだし、自分の健康に対して責任をもっていないということ。だから「乳がんでは死なないで」ほしい。これが心からの、愛を込めたメッセージなのです。
『乳がん患者に贈る 愛と勇気の玉手箱』
乳がんから救われた命を、日本女性のために捧げると誓ったワット隆子さんの最新著書。
「乳がん患者が強く美しく生きて見せることが乳がんに対する偏見をなくし、乳がん早期発見に繋がって、ひいては乳がん死を減らすことになるのです!」(本書帯より)
『乳がん患者に贈る 愛と勇気の玉手箱』を購入する
(ワット隆子/同友館/2006年10月)
取材・文/金子美和
2009/04/21 更新
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